プラネット・アポカリプス/序章

序章

 世界創世以降、あらゆる聖典が地獄が人類を蹂躙する日がやってくることを告げている。賢明な政府は地獄の存在に対して準備を講じていないほど怠慢ではない。彼らはそれらに対抗する魔術的な力に特化した戦士たちを育てていた。戦士たちは古の血脈の力たる始祖の魔法を伝承され、さらには武器戦闘や格闘術、指導者としての訓練を受けていた。また、戦士たち自身はそれこそ骨まで魔術的な存在となるような特別な祝福も与えられていた。


 そして指導者たちは地獄がこの世界にやってくるためには魔術的な門を媒介にしなければならないことも認識していた。そのためあらゆる門が調べ上げられ分類されていた。人目につかない門は塞ぐか破壊し、ストーンヘンジのような門は(ドルイドによる儀式などによって)聖別することで地獄が利用できない状態を維持するようにしていた。


 それゆえ、地獄が利用したのが最も強力な魔術的な存在である戦士たちの肉体だった。その時が訪れたとき、研鑽を重ね鍛えてきた戦士たちの肉体はすべてが一瞬のうちに門へと変容し、そしてこの世に地獄が顕現した。


 地球の軍隊はそうしてやってきた地獄の悪魔に対抗することができなかった。悪魔の姿、あるいはその声、匂いの前に人は羊同然の存在となってしまったのだ。世界は滅びに覆われた。しかし生き残った人々は、少数ではあるが未だ悪魔に立ち向かい自分たちのリーダーとなって戦うことができる者がいることに気づいた。彼らは亡き戦士たちと何らかの縁があったため、かろうじて始祖の魔法とつながりが残っていたのだ。ある者は戦士の1人から腎臓移植を受けていた。中には8歳になったときに戦士の1人と義兄弟の契りを交わしその交流を続けていた者もいた。
もちろん、新しい英雄たちは特別な訓練は積んでおらず、儀式による祝福も受けていないし、この戦いが始まったときに携えていたものしかその手には残っていない。しかし、これこそ人類が自分の足で立ち上がるための天の配剤なのかもしれない。希望はまだ失われていないのだ。